米国も「ステルス値上げ」 イラン問題が中間選挙に影響
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中東産原油の流通がストップし、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は一時、1バレル110ドル台に突入しました。
ホルムズ海峡というチョークポイント(要衝)が厄介なのは、本当に物理的に通れないレベルでイランが軍事力を展開しなくても、実質的な封鎖ができてしまう点です。「ミサイル飛来の可能性」というリスクがあれば、民間の船は通航しようとは考えませんし、航行に保険はかけられなくなります。
トランプ米大統領は北大西洋条約機構(NATO)などに対し護衛艦の派遣を要求していますが、各国は応じていません。そもそも護衛艦がいたところで、ミサイルのリスクをゼロにできない以上、効果を持つとは限らないのです。
とはいえ、マーケットは今のところ、戦争がそこまで長期化しないと見ているようで、日経平均株価は5万円台を保っています、直近では一時停戦の合意があったようですが、トランプ氏にとっても長引かせるメリットがないことは確かです。コアな支持層である福音派を除けば、世論は対イラン戦争を支持していません。長引いたり、地上戦に踏み切り米国人に大きな犠牲が出たりすれば、11月の中間選挙に悪影響が出かねません。
米国はイランの政権交代を狙い、ベネズエラへの軍事作戦のような短期決戦を狙っていたのでしょうが、それには失敗しました。むしろ今は、イランが経済戦争を仕掛けて米国の"政権交代"を狙っているかのような、そんな皮肉な状況が生まれています。
なお、イランとイスラエル以外の中東諸国は、基本的にはイラン政府と対立する立場です。しかし、それぞれの国民の間にはイランへのシンパシーも確実にあります。中東諸国はイランを非難はしても、米国とガッチリ組んで対イラン攻撃に動くことはないでしょう。
対イラン戦争の開始前から、トランプ氏の支持率は下落傾向にありました。理由は複数ありますが、米国経済が良い状態ではないこともその一つです。
4月初旬まで米国に出張していたのですが、驚いたのはレストランの一食分の量が減っていたことです。日本人目線では食べきれないほどの量を出してくるのが普通だったのに、多くの店で目に見えて減っていました。
これは、日本では以前から起きていた「シュリンクフレーション」でしょう。値段を変えずに中身を減らすことで、「ステルス値上げ」とも呼ばれます。以前の日本人はインフレへの抵抗が強く、値上げすると如実に売れ行きに響くため、日本企業はシュリンクフレーションを選びがちでした。米国で同じことが起きているということは、米国人にとってもインフレが限界点に近い可能性があります。
4月初旬に発表された3月の米雇用統計を見る限り、米国の雇用情勢は意外と強いのですが、同時に発表されたサービス業購買担当者景気指数(PMI)改定値は速報値から下方修正され、好況不況の節目となる50を割る3年ぶりの低水準でした。外食産業を含むサービス業の減速は確実でしょう。そこに今後、対イラン戦争によるガソリン高の影響も加わります。
足元の内需の状況を見る限り、個人消費は力強くはないものの回復基調でした。賃上げ進展とインフレの沈静化で、26年1〜3月期は実質賃金の伸びがプラスに転じたと思われます。
ただ、日本を含むアジアは、中東産原油への依存度が高く、ホルムズ封鎖の経済への影響が特に深刻な地域です。日本はアジアの中では備蓄や代替調達がうまくいっていますが、それでも欧州などと比べれば悪影響が避けられません。
悪影響は原油だけにとどまりません。窒素肥料の原料は中東産の天然ガスやアンモニア・尿素。肥料価格が上昇し、食料価格にも上昇圧力となります。逆に言えば日本の肥料関連企業は恩恵を受ける可能性もあります。
そして、たとえ早期終戦が実現しても、原油価格が元の60ドル台に戻ることは考えにくいでしょう。イランがホルムズ封鎖を「望めば切れるカード」として得てしまった以上、中東の資源は今までと同じコストでは手に入りません。日本でもインフレの再燃は避けられず、実質賃金は再び減少に転じる可能性が高まっています。
原油の確保が重要ならドルは買われるため、1ドル=160円を超えて円安が進む環境は整っています。今の円安は投機筋の主導ではないため、為替介入を行っても効きづらい状況です。日銀の追加利上げは近づいているでしょう。
日本企業の業績は元々が回復基調にあったため、戦争が長期化しない限りは決定的に失速するとは思いませんが、なるべく資源高の悪影響が少ないセクターにフォーカスする視点は必要でしょう。
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