コンゴ「エボラ出血熱」再拡大…死者134人、WHOが緊急事態宣言 “封じ込めにくいウイルス”の謎【7つのポイント】
今回の流行はどのような特徴を持ち、現地では何が起きているのか。国境なき医師団(MSF)の見解をもとに、その実態を読み解くとともに、最前線で進めている活動について、7つのポイントから説明する。 ポイント1:今回の流行の特徴は? 今回の流行は、コンゴでこれまでに発生した多くのエボラウイルス病とは異なり、ブンディブギョ・ウイルスによって引き起こされている。 エボラウイルス病は「オルソエボラ・ウイルス属」に属するウイルスの種類であるエボラ・ウイルス、スーダン・ウイルス、ブンディブギョ・ウイルスなどによって引き起こされる感染症だ。
最も一般的で致死性が高いのはエボラ・ウイルスで、ブンディブギョ・ウイルスの致死率は比較的低いとされている。 しかし、ブンディブギョ・ウイルスには承認されたワクチンや治療法がなく、診断する方法にも課題がある(次項「ブンディブギョ・ウイルスとは」参照)。その結果、症例の確定に時間がかかり、接触者の追跡や患者隔離といった感染対策の実施にも遅れが生じている。 ■流行しているウイルスの種類 ポイント2:ブンディブギョ・ウイルスとは
ブンディブギョ・ウイルスによる流行は、2007〜08年のウガンダ、2012年のコンゴに続き、今回で3回目となる。 この種類のウイルスは、2007年にウガンダ西部ブンディブギョ地区で初めて確認され、当時は131件の症例と42人の死亡が報告された。致死率は約25〜40%と推定され、より一般的なエボラ・ウイルスと比べると低い傾向にある。 一方で、ブンディブギョ・ウイルスに対しては既存のエボラ・ウイルス向けの治療法やワクチンが有効ではなく、承認された対策はない。さらに、診断においても、このウイルスに対応する簡便なPCRキットはなく、 煩雑で高度な技術を要する従来型のPCR検査に頼らざるを得ない。
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ポイント3:流行が確認された経緯は? 今回の流行は、コンゴ・イトゥリ州の州都ブニアの北西に位置するモングワル保健地区で、ウイルス性出血熱が疑われる死亡が異常に増加したとの警告を受けて、初めて確認された。 MSFが保健省と連携して行った調査では、4月以降に数十人が死亡していたことが判明し、ブニアおよびルワンパラ保健地区でも疑い例と確定例が報告されている。流行は数日間で、イトゥリ州および北キブ州へと急速に拡大している。
また、ウガンダでも2件の感染が確認された。 最初の症例はコンゴ人男性で、5月11日に首都カンパラにある病院に入院し、5月14日に死亡した。いずれもコンゴからの輸入例とされており、ウガンダ保健省も5月15日、エボラウイルス病の流行を宣言した。 ■ウガンダの首都カンパラでも確認 ポイント4:現在の感染状況は? 5月18日時点で、コンゴでは疑い例536件、疑いによる死亡134件、確定例34件、死亡8件が公式に報告されている(※)。主な感染の中心はイトゥリ州だが、北キブ州でも州都ゴマを含む各地で複数の感染が確認されている。
また、ウガンダの首都カンパラでも、互いに関連のない確定症例が2件報告されており、そのうち1件は死亡している。 ※コンゴ政府およびWHOは、現地の状況から報告漏れの可能性が高いとして、これらの数値は慎重に解釈する必要があるとしている。 ポイント5:流行状況と懸念点は? 数週間前から症例が確認されているものの、現在の流行状況は不透明で、極めて急速に変化している。最大の懸念の1つは、診断体制の不足や症例の過少報告により、流行の全体像を十分に把握できていないことだ。
さらに、この地域は紛争により情勢が極めて不安定で、南スーダンやウガンダの人びとの国境を越えての移動も活発に行われている。こうした移動は、武力衝突に加え、資源採掘や交易によっても生じており、感染の拡大を加速させるとともに、封じ込めをより困難にしている。 また、多くの医療施設がすでに逼迫し、資源も不足する中で、エボラウイルス病に対応するための感染予防や管理体制が十分に整っていない。 ■感染拡大を防ぐ方法は?
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ポイント6:空域を閉鎖して、影響地域外への感染拡大を防ぐべきか? 空域の閉鎖や一律の渡航制限は、エボラウイルス病の流行を封じ込めるうえで、必ずしも効果的な手段とはいえない。 MSFのこれまでの経験から、こうした措置は医療チームや物資、検査機材の迅速な輸送を妨げ、対応の遅れにつながる可能性があることがわかっている。また、国際的な支援を必要とする国々を孤立させてしまうおそれもある。 感染拡大を防ぐために重要なのは、流行の発生源で確実に制御することだ。具体的には、症例の迅速な特定、患者の隔離と治療、接触者の追跡、地域社会との連携、そして徹底した感染予防対策が求められる。
対象をしぼった健康チェックや、科学的根拠に基づく公衆衛生措置は不可欠である一方、疫学的な根拠ではなく恐怖心に基づいた広範な移動制限は、かえって状況を悪化させる可能性がある。 ポイント7:MSFの現在の活動内容と優先事項は? MSFは現在、コンゴの保健当局やWHOなど関係者と連携しながら、大規模な対応に向けた準備を進めている。 ウイルス性出血熱の治療経験を持つ医療従事者やロジスティクスのスタッフの動員に加え、医療物資や機材をコンゴの首都キンシャサやウガンダの首都カンパラにあるMSFの供給拠点から、影響のある地域へ輸送している。
■6つの対応を柱に調整中 具体的な活動内容は調整中だが、エボラウイルス病への対応は主に次の6つを柱として進めていく。 1.患者の治療と隔離 2.接触者の追跡とフォローアップ 3.感染予防や受診先に関する地域住民への啓発 4.安全な埋葬の実施 5.症例の早期発見 6.既存の医療体制の支援 あわせて、既存のプロジェクトにおいても感染予防対策を徹底し、患者やスタッフを守るとともに、人びとの医療アクセスの確保にも取り組んでいく。
とりわけ重要なのが、地域社会との関わりだ。人びとの信頼なくして対策は機能しない。ワクチンや検査、治療体制、接触者の追跡も、人びとの協力があって初めて効果を発揮する。 MSFのこれまでのエボラ対応から得られた教訓の1つは、通常の医療サービス、例えば、マラリアの治療やはしかの予防接種、リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する医療)などへのアクセスを維持することの重要性だ。 ■エボラだけではない人道危機
コンゴではエボラウイルス病のみならず、特に東部地域において、マラリアやはしかといった予防可能な病気が依然として主要な死因となっており、複数の人道危機が重なっている。 そうした状況下でMSFは、既存の医療活動を維持し、人びとが必要なときに基本的な医療サービスを受けられる体制を支えていく。 (情報は5月19日現在のものとなります)
国境なき医師団 :非営利の医療・人道援助団体