米AI半導体株続落「調整のクライマックス」はどこか?短期・中期・長期の目線で分析
悪材料の連鎖で急落するAI半導体株は、テクニカルでは土俵際まで来ています。「もう終わり」と投げ出す前に見ていただきたい短期・中期・長期のシナリオ目線とは? 市場全体の動きや割高感の修正を踏まえ、波乱相場でもブレない投資判断の軸を解説します。
この記事の目次 [閉じる開く]●悪材料の連鎖で半導体株は急落し、重要な節目で踏みとどまれるかのチェック場面。 ●短期(1~2カ月)は波乱が続く公算ながら、3~12カ月では復調模索に向かうと想定。
●米中間選挙での民主党スウィープは、半導体にマイナスでも、プラス作用部分を生かす目線も。
悪材料ラッシュの果てに
足元の米国では、AIメモリー・半導体株にとって、これでもかという悪材料が連続しました。
相場は6月下旬をピークに反落、調整局面入りすると、8~9月と底練りを進め、9月末から10月初めには大きく反発もしました。しかし、調整局面に大きくなりやすい乱高下の波動で、10月中旬には調整反落し、月末にかけて再浮上するというのが当社モデルの示唆でした。
ただ実際には、10月下旬にネオクラウドのコアウィーブ(CRWV)社の社債の金利が15%まで急上昇して信用不安が高まります。
その後、メタ・プラットフォームズ(META)、アルファベット(GOOG、GOOGL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)が、決算で積極的なAI設備投資に対する資金繰りが懸念され、株価急落。この場面は、サービスナウ(NOW)などAIソフトウエア決算も不調で、AI株全般に失望売りが広がりました。
そして、ダメ押しは米中間選挙です。民主党が上下院、主要知事を制しました。民主党は、地元のデータセンター建設が、電力価格上昇や水資源不足を招くとして、規制強化を訴えています。神経質な調整途上の相場では、データセンター建設が遅れれば、メモリー・半導体への需要にも悪影響があろうと不安をかき立てるでしょう。
10月下旬から次々と続く悪材料に、SOX半導体株価指数は、節目の200日移動平均線を割り込みました(図1)。
<図1>SOX指数(50・100・200日移動平均)
出所:Bloomberg
トレンド線を割り込んだという認知は、投資家の下値警戒を高めやすくなります。200日移動平均線は相場が土俵割れするかどうかの淵で、今は俵につま先が辛うじて残っているような状態です。踏みとどまれなければ、土俵から転がり落ちるかもしれません。
もちろん、土俵を割らずに、半導体相場が一進一退で下値固めをする可能性もあるでしょう。半導体株は、悪材料ラッシュで10月下旬から先行的に売られてきました。悪材料出尽くし的な買いが優勢になるには、まずは節目の200日移動平均線より上に、ごく短期で戻れるかを注視します。
日なた側に残るか、日陰側に転がるかというほど、投資家心理の明暗を左右する節目だといえるでしょう。
短期・中期・長期のAI相場観
もっとも、これは短期的な目線です。今回の下落をAIバブルの破裂とみるか、メモリーに限定したフロス(小さい泡)の破裂が尾を引いているとみるかは、人それぞれでしょう。私は依然として足元の調整をフロスとして、下落も限定され、立ち直りも効く可能性を模索しています。
そのために、1~2カ月の短期、3~12カ月の中期、2~3年の長期に分けて、AI革命の進展を思い描いています。
短期(1~2カ月)
まずこの期間は、投資家行動に基づく相場変動リズムを解析する、当社モデルの対象期間です。売りのクライマックスはこの期間中とみています。
本モデルは元々、2026年末までは、6月下旬以来の相場調整の余波で、SOX指数で計算する半導体株は大きめの波動の高下を継続すると示唆してきました。目先は11月中旬のダレを経て、11月末にかけて反発するリズムが起こり得るかを注視する構えです。
中間選挙の民主党スウィープの結果、データセンター建設への規制観測が高まっていることは、半導体株には悪材料と受け取られるでしょう。一方、規制でデータセンター建設が遅れるなら、ハイパースケーラーにとっては、資金繰り問題を緩和するかもしれないとして、好材料視される面があります(図2)。
<図2>ハイパースケーラーなどAI設備投資
出所:各種資料より田中泰輔リサーチ作成
中期(3~12カ月)
続いて3~12カ月を考えると、深みにはまった半導体相場の調整も収束して、復調路をたどるイメージです。おそらくこの期間では、まだハイパースケーラーの決算に見る資金繰りも厳しめでしょう。
しかし、データセンターの建設はこれまでも遅れがちであり、規制でペースダウンしても実質的に半導体需要の後退をもたらすことはないとみています。
また民主党であっても、中国に先を越されないよう、あるいはAI需要の増加に応じて、データセンターの建設をある程度認めていかざるを得ないでしょう。もし規制でネオクラウド社が窮地に陥れば、ハイパースケーラーなど大手が買収して引き継ぎ、AI需要に応えていくのではないかとみています。
長期(2~3年)
最後に2~3年のスパンを考えたとき、ハイパースケーラー各社は資金繰りを好転させ得る、あるいは、好転させなければならない期間と考えています。フリーキャッシュフローがプラス転換して増加に向かうという見通しが示される辺りには、株式相場も先行的に織り込んでいくでしょう。AI革命を戻らざる大河とする大局観に照らすと、旺盛な需要は続くとみるのが妥当と考えています。
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グローバルマクロ・アドバイザー。1983年慶應義塾大学卒業後、日本長期信用銀行、モルガン・スタンレー証券、ドイツ証券ほか、日米欧のグローバル金融機関9社でトレーダー、ストラテジストなどを歴任。国内外の主要アナリストランキングで20年以上トップ級に選出、高い評価を得てきた。個人、プロを問わず投資家のニーズに一貫したロジックで応える分析、戦略に定評がある。田中泰輔リサーチ代表。「田中泰輔リサーチ」ウェブサイト
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