FOMCは金利据え置きへ、年内利下げ巡り市場はFRB議長会見注目
米金融当局者が金利据え置きの長期化を示唆する中で、投資家やエコノミストはパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の今週の会見から当局が最終的に動き出す要因とその時期についての手掛かりを探る構えだ。
連邦公開市場委員会(FOMC)は今週、4会合連続で利下げを見送る見込みで、トランプ米大統領からの批判を再び招く可能性もある。だが、金融当局者らは、利下げに踏み切るには、関税や移民、税制を巡る大きな疑問符をホワイトハウスが解決する必要があるとの立場を明確にしてきた。イスラエルによるイラン核施設への攻撃も、世界経済の新たな不確実性をもたらしている。
一方で、米経済は緩やかな減速はあるものの総じて堅調であることから、早期の利下げを予想する向きは少ない。金利先物価格に基づけば、早くても9月までは利下げはないというのが投資家たちの見立てだ。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフグローバルストラテジスト、シーマ・シャー氏は「利下げの緊急性がない状況で最も安全なのは、静観することだ」と語る。
FOMC会合は6月17、18両日に開かれ、米東部時間18日午後2時(日本時間19日午前3時)声明が発表される。30分後にはパウエル議長が記者会見に臨む予定。
難しい選択
トランプ関税は、物価上昇と成長鈍化を招くと広く予想されており、前回会合後の声明でもこうしたリスクが指摘された。経済が相反する方向に引っ張られる中で金融当局は難しい選択を迫られる可能性がある。
キャピタル・グループの債券ポートフォリオマネジャー、デビッド・ホーグ氏は「現時点で懸念すべき事態ではない」と述べた上で、「消費者や企業にとって計画が立てづらい不確実性が長引けば、経済のファンダメンタルズに対する懸念が高まる」と指摘した。
ただ、経済には現時点で、FRBが介入を迫られるような明確な警戒信号は見られない。
雇用市場は安定
失業率は3カ月連続で横ばいが続いており、雇用の伸びが鈍化しているものの、移民の急減により労働力供給も減っていることが一因だ。失業率の安定が長続きすれば、インフレ抑制のための防御策として、当局は金利を長期にわたり据え置くことができる。
同時に、物価指標も懸念材料にはほとんどなっていない。5月の米消費者物価指数(CPI)統計で食品とエネルギーを除くコア指数の伸びは4カ月連続で市場予想を下回った。これを受けて年内に2回以上の利下げを見込む投資家の思惑が強まり、米国債相場は先週上昇した。FRBの政策に最も敏感な2年物債利回りは先週1週間で7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)超低下し3.96%まで下がった。
ただ、当局は関税の価格転嫁がどの程度進んでいるかを見極めるため、今後数カ月のデータを待つ公算が大きい。イスラエルによるイラン空爆はさらに不確実性を高める。金融当局は従来、エネルギー価格の変動を静観してきたが、原油価格の急騰はインフレ期待に影響を及ぼす恐れがある。
新たな予測
今週発表されるFOMCの経済・金利予測は、当局者の考え方を読み解く手掛かりとなる。これはトランプ氏が「解放の日」と称した4月2日の関税発表以降、初のFOMC予測となる。
アナリストの見方は分かれており、予想レンジは異例に広くなっている。シャー氏によれば、失業率が今年、3月時点の予測(4.4%)を大きく上回るとの見通しが示された場合、10-12月(第4四半期)より前の利下げの可能性が示唆されるという。
一方で、インフレ予測が上方修正されれば、年内の利下げ回数見通しは3月時点の2回から1回に減る可能性があるとドイツ銀行のチーフ米国エコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏はみる。バークレイズのストラテジストは顧客向けリポートで、こうした「タカ派的な」サプライズへの警戒を呼びかけている。
原題:Fed on Hold Leaves Wall Street Asking What It Will Take to Cut(抜粋)