【米国市況】S&P500種は小幅続伸、国債は反発-ドル144円台後半
9日の米株式市場では、S&P500種株価指数が小幅続伸。米中の通商協議が進む中、買いがわずかに優勢になった。当局者は協議の進展を示唆した。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6005.88 5.52 0.09% ダウ工業株30種平均 42761.76 -1.11 0.00% ナスダック総合指数 19591.24 61.29 0.31%S&P500種は2月に付けた最高値まであと約2%の水準にある。この日は大手ハイテク株が上昇をけん引した。テスラは約4.5%上昇。トランプ大統領がホワイトハウスにあるテスラ車とスターリンクは手放さないなどと語り、マスク氏との関係修復に前向きな姿勢を示したことが追い風となった。
ただ、アップルは下落した。世界開発者会議(WWDC)で主要な人工知能(AI)関連の発表がほとんどなかったことが嫌気された。
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ロンドンでの協議に出席したベッセント米財務長官は、初日の会合後記者団に「良い話し合い」だったと述べた。同席したラトニック商務長官も「実りある」協議だったと振り返った。トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に「中国とは順調にやっている。簡単な相手ではない」と述べ、「良い報告しか届いていない」と続けた。
英ロンドンで9日午後に始まった米中の通商協議では、米国側は中国から希土類(レアアース)輸出規制緩和の確約が得られれば、一部のハイテク製品に対する輸出規制解除を検討する用意があることを示唆している。協議はロンドン時間10日午前10時に再開されるという。
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トレジャリー・パートナーズのリチャード・サパースティーン氏は「上乗せ関税の導入延期に加え、当初発表よりも穏やかな措置が取られるとの見方から、相場はこれまで上昇している」と指摘。「通商交渉には時間がかかり、不安定な関税関連の材料がかなり荒い値動きを引き起こす可能性が高いため、市場は引き続きニュースに敏感な状態が続くだろう」と述べた。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「状況は当初懸念されていたほど深刻ではないものの、油断は禁物だ」と述べた。「過去最高値まで2%を切る水準に迫っているが、明確な原動力がない限り、今週中の到達は難しいだろう」と話した。
ウォール街のストラテジストらが米国株に対して楽観的な見方を強めている。モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス・グループのアナリストらも、堅調な経済成長が夏場の下落を限定的なものにとどめるとの見方を示している。
モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、米企業の業績見通しが大幅に改善していることは、年末に向けたS&P500種株価指数の上昇にとって好材料だと述べ、今後12カ月の同指数の目標水準を、現在の水準より8%高い6500ポイントとしている。
JPモルガン・チェースやシティグループなどのストラテジストらも、ここ数日でS&P500種株価指数の年末見通しを引き上げている。トランプ氏の貿易戦争によるショックの最悪期は過ぎたとの見方に基づくものだ。一方、ゴールドマン・サックスのストラテジスト、デビッド・コスティン氏は、最近の市場の動きが、投資家が楽観的な成長見通しを織り込みつつあることを示していると指摘した。
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UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマンブチャディ氏は「相場変動のリスクは続いている」と指摘。「しかし、株式市場への待機資金の流入を阻止することにはならないだろう。特に株価が今後12カ月に上昇し、金利と現金のリターンが年内に低下するとの当社見通しを考慮すると、なおさらだ」と語った。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのリサ・シャレット氏は「恐怖、弱気派のポジション解消、そして誤ったポジショニングがS&P500種株価指数の20%を超える反発を後押ししてきた」と分析。「市場は先行きを織り込みつつあるが、現在の上昇局面は依然として説得力に欠けているように見える」と指摘した。
米国債
国債相場は反発。大幅安となった前週末からやや安定した。ただ、国債への需要を再び試す30年債入札を12日に控え、様子見ムードも強かった。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.94% -2.8 -0.56% 米10年債利回り 4.47% -3.2 -0.71% 米2年債利回り 4.00% -3.7 -0.92% 米東部時間 16時53分早朝の取引では、欧州債の上昇につれて上昇。米国時間の取引が始まると、伸び悩む場面もあったが、その後は再び上昇した。 米消費者のインフレ期待低下が背景にある。
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アリストテレス・パシフィック・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ジェフリー・クリンゲルホーファー氏は「30年債は一種のテールリスク型の金利だ」と指摘。30年債にとって財政赤字拡大への懸念は、短期債はもちろん、7-10年債よりもはるかに重大だと指摘した。
30年債利回りは4月初旬から上昇を続け、5月22日には2023年以来の高水準となる5.15%を記録した。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツの債券ポートフォリオマネジャー、ローレン・バン・ビリヨン氏は30年債入札について「6月全体の方向性を決める重要なポイントになるだろう」とブルームバーグテレビジョンで発言。「長期資金調達に関する懸念がいかに強いかは、すでに明白だ」と話した。
為替
外国為替市場ではブルームバーグ・ドル・スポット指数が下落。ただ、ロンドンで再開された米中通商協議への期待感から下げ渋る場面もあった。
円は対ドルで、欧州時間に1ドル=143円98銭まで上昇したが、ニューヨーク時間には144円70銭台まで上げを縮小する場面があった。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1209.26 -2.48 -0.20% ドル/円 ¥144.63 -¥0.22 -0.15% ユーロ/ドル $1.1419 $0.0022 0.19% 米東部時間 16時54分ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のマーケット戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は「今週も貿易と財政政策の不確実性が継続しており、ドルを圧迫するだろう」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は3営業日続伸。ロンドンでの米中通商協議の開始を受けて、世界的な緊張緩和への期待が高まった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=65ドル台に乗せ、4月初旬以来の高値で終了した。
ブリッジトン・リサーチ・グループのデータによれば、値動きを加速させる可能性のある商品投資顧問業者(CTA)はこの日、WTIに対するショートポジションを解消した。今月5日時点では64%ショートの状態だった。原油相場が現行水準から3-4%上昇すれば、CTAは2月以来のネットロングになる可能性があると、ブリッジトンは指摘する。
国際原子力機関(IAEA)は、イランがウランの備蓄を急速に拡大している現状に対し、国際社会は断固とした対応を取る必要があり、このまま容認することは許されないとの見解を示した。
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市場関係者は米国とイランの核協議の進展を注視している。協議が不首尾に終われば、イランからの原油供給に影響が生じる可能性がある。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前営業日比71セント(1.1%)高い1バレル=65.29ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は57セント(0.9%)上昇し、67.04ドルで引けた。
金
金スポット相場は反発。スポット相場はニューヨーク時間午後4時3分現在、前営業日比0.5%高の1オンス=3328.03ドル。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は8.30ドル(0.25%)高の3354.90ドルで終えた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)は金相場について、いずれ1オンス=4000ドルに達すると予想している。同行の商品・デリバティブ調査責任者、フランシスコ・ブランチ氏は「ただ、それは2026年の話かもしれない」とし、「相場が本格的に上昇するには実質的なショックが必要だ」とブルームバーグテレビジョンのインタビューで述べた。
原題:S&P 500 Ekes Out Gain as US-China Talks to Resume: Markets Wrap(抜粋)
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