トランプ・プレミアム消滅、一族会社の資産急減-イメージに悪影響も

トランプ米大統領の次男、エリック氏らが共同で設立した暗号資産(仮想通貨)ビットコインのマイニング(採掘)会社アメリカン・ビットコインの株価が、米株市場の2日の取引で急落した。

  それは一瞬の出来事だった。取引開始からわずか1分後の午前9時31分時点で株価は33%下げ、5分後には42%安となった。午前9時56分には下落幅が51%を超えた。

  アメリカン・ビットコインの株価の値崩れは目を見張るものがあり、2025年終盤の暗号資産の相場急落だけでなく、トランプ家が過去1年間にデジタル通貨の世界で後押ししてきたベンチャー企業群崩壊の象徴となった。

  暗号資産は相場全体が過去2カ月で下げ、ビットコインの下落幅は約25%に達したが、トランプ家が関係するプロジェクトの下げは、はるかに大きい。

  トランプ大統領と息子らが共同で設立した「ワールド・リバティー・ファイナンシャル」 の独自トークン(仮想通貨)WLFIは、9月初めのピークから51%下落し、ビットコインや比較的規模の小さいデジタルトークンの指数を上回る著しい下げに見舞われた。トランプ氏の息子らが関係するALT5シグマは、増え続ける法的問題に対応を迫られているが、株価は約75%急落する展開となった。

  さらに大統領とメラニア夫人にちなんで名付けられたミームコインは、1月に付けた最高値からそれぞれ約90%、99%価値を失った。アメリカン・ビットコインは、2日の大幅下落を受け、下げ幅が75%に達した。 

  一連の動きは、トランプ一家が今年蓄積した暗号資産関連の莫大(ばくだい)な富に大きな打撃を与えた。しかし同時にデジタル資産業界と大統領の公的イメージにとって、より幅広い重要性を帯びる。トランプ氏の支持は、政権2期目の早い段階で多様なトークンの価格上昇を後押しし、ビットコインの価格を大統領の政治的成功の指標に変えた。 

  だがここに来て、トランプ・プレミアムと思われたものが、トランプ・ドラッグ(足かせ)に突然転じ、暗号資産を支える中心的柱の一つが崩れた。これら投機的市場への信頼、さらには大統領自身への信頼でさえ、いかに急速に失われるかを示すものだ。

  アメリカン大学ワシントン・カレッジ・オブ・ロースクールのヒラリー・アレン教授(法学)は「正当性に関して言えば、もろ刃の剣だった。トランプ氏は独自の暗号資産プロジェクトを開始したが、その多くがたちまち価値を失った。トランプ家を通じて正当性を獲得することが目標だったとすれば、成功しなかった」と指摘した。

テネシー州ナッシュビルで開催された「Bitcoin 2024」会議で発言するトランプ氏

  ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、10月以降の下降局面で、トランプ家が暗号資産ベンチャーなどのビジネスで築いた10億ドル(約1555億円)余りの資産が失われた。

  ワールド・リバティー・ファイナンシャルと、トランプ氏のミームコインの関連会社「ファイト ファイト ファイト」にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。

Eric Trump and Donald Trump Jr. 2025年5月、ネバダ州ラスベガスで開催された「Bitcoin 2025」会議でのエリック・トランプ氏とドナルド・トランプ・ジュニア氏。

原題:The 26-Minute, 51% Wipeout That Deepened the Trumps’ Crypto Woes(抜粋)

(トランプ家の資産に関する情報を追加して更新します)

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