自民で「石破おろし」やまず、総裁選前倒し焦点-超長期債が急落
参院選大敗を受けた自民党内の混乱が続いている。石破茂首相は自身の責任を「しかるべき時」に決断するとしたが、退陣要求が収まる気配はない。政局流動化への懸念から超長期債は大幅安となっている。
2日に行われた両院議員総会の冒頭、石破首相は物価高、日米関税交渉、農業政策、防衛力強化、防災などの政策課題を列挙。これらの課題を早急に解決をすることが自民党に課せられた使命だとした上で、「地位に恋々とするものでは全くない」と述べた。
参院選の総括終了で、焦点は8日に行われる臨時総裁選実施の意思確認に移る。対象は党所属国会議員295人と都道府県連代表47人の計342人。過半数が前倒しを要求すれば、任期満了前に総裁選を行う。午後3時で書面が締め切られ、速やかに結果が公表される予定だ。仮に実施となれば首相は厳しい立場に追い込まれる。
円売りも
政局流動化への警戒から、市場では超長期債が大幅安となり、円売りも進んだ。新発30年国債利回りは過去最高を更新した。東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=149円台前半まで下落した。
ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、「グローバルな財政拡張懸念に加え、国内の政局の不安定化が超長期金利上昇のドライバーになっている」と分析。ドル・円相場も「狭いレンジを上抜けしつつあり、米国に資金が戻っている」との見方を示した。
日本銀行の金融政策への影響を指摘する声もある。ガマ・アセット・マネジメントのグローバル・マクロ・ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は、政治の見通しが不確実になっていることで政策金利引き上げの判断が難しくなっているとの見方を示した。
その上で、円相場に重しとなり、国債市場にも影響を与えていると指摘。インフレ抑制に向けて日銀が政策金利を正常化していくというより明確なサインが出れば、日本国債に対して強気に転じる兆候となるとも分析した。
こうした中、植田和男総裁は3日、見通しが実現していけば経済・物価情勢の改善に応じて利上げを進めるとし、予断を持たずに判断するとの見解を示した。官邸で石破首相と会談後、記者団に語った。会談では為替の話も含め、市場の動向などについて意見交換したという。
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割れる党内
首相自ら責任取る意向を示した両院総会だったが、出席者の反応はさまざまだ。かねて政局より政策推進を優先すべきだと主張していた寺田稔衆院議員は、首相から「しかるべき時期にという発言もあり、あえて政局に持ち込むようでやり方はよくない」と指摘。総裁選前倒しには慎重な考えを示した。
棚橋泰文衆院議員も「表紙を代えて何とかというような姑息(こそく)なまねをするべきではない」と発言。総裁選実施を求めるのであれば、全ての有権者が参加できる衆院の解散・総選挙を行うべきだと述べた。
首相に退陣を求める姿勢を崩さない議員もいる。執行部が自ら責任を取ることを求めてきた中曽根康隆青年局長は、石破首相に対し、「周りから引きずりおろされるようなことではなく、ご自身の決断において結果責任をとっていただきたい」と自発的な辞任を促した。
昨年の総裁選に立候補した小林鷹之元経済安全保障担当相は、8日までに首相の責任の取り方について「何ら変更がない場合」は臨時総裁選実施を求める文書に署名すると話した。共同通信によると、麻生太郎最高顧問も3日、横浜市で開いた麻生派会合で総裁選前倒しを求める考えを表明した。
いばらの道続く
前倒し要求が過半数に至らない場合でも、いばらの道は続く。森山裕幹事長は2日に辞意を表明したが、進退の扱いは石破首相に一任された。鈴木俊一総務会長、小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長も退任の意向を首相に伝えた共同通信が報じており、後任人事で体制を立て直せるかが課題となる。
国対委員長を長く務めた経験のある森山幹事長は少数与党となった国会運営で野党との調整などを通じて石破政権を支えてきた。石破首相は森山氏の進退について適切に判断するとした上で、「余人をもって代えがたい方だと今でも思っている」と記者団に語った。
報道各社が8月に実施した世論調査で内閣支持率は軒並み上昇していた。日本経済新聞社などが同月29-31日に実施した調査では42%と、半年ぶりに内閣支持率が4割台に回復した。7月の前回調査は石破政権発足後で最低の32%だった。共同通信の約1週間前の調査でも7月より12.5ポイント上昇し、35.4%となった。
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