5兆円ファンド「世界のベスト」が指数に負ける理由。AI株をほぼ持たない戦略は、バブル崩壊時に報われるのか?(ダイヤモンド・ザイ)
世界のベスト(インベスコ世界厳選株式オープン)公式サイト((c)diamond)
「世界のベスト」(正式名称:インベスコ世界厳選株式オープン)は純資産総額約5兆円を誇る人気ファンドです。今回はこのファンドをAI(アンソロピックのClaude)を使って調べてみました。
わかったことは、このファンドがAI関連株をほとんど持たないという大きな賭けをしていて、それが直近の出遅れの最大の理由ということでした。●世界のベストがベンチマークの株価指数に負けている理由はAI関連株をほとんど持っていないから 2026年9月末時点で、ファンド(為替ヘッジなし、毎月決算型)はベンチマークとしている指数、MSCIワールド(円換算)に、1年で7.9ポイント、3年で年率4.2ポイント負けています。負けの大半は直近1年です。 最大の理由は、AI関連株の少なさです。 情報技術はファンド13.6%に対し指数31.8%で、AI関連株全体では約21ポイントのアンダーウェイトです(運用報告書の全保有銘柄で確認)。 アップル、アルファベット、メタは保有ゼロ。エヌビディアは2023年6月に全株を売却していました。ChatGPTの登場でAI相場が本格化した、まさにその時期です。2026年前半にはASMLも売り、指数との差は倍に広がりました。●世界のベストはどのような株を多く保有しているのか? AI関連株から外した資金は、生活必需品やヘルスケアのような守りの株ではなく、資本財(+15.5)や金融(+9.4)といった景気敏感株に回っています。つまり、このファンドは、「AI関連株は割高だが、景気は強いまま続く」ということに賭けています。 この賭けは、AI関連株だけが崩れて、景気は持ちこたえる局面には強いでしょう。ハイテク株が崩れた2022年、ファンドは指数を約9.5ポイント上回りました。 逆に、AI関連以外の株が売られる局面には弱く、2026年3月と9月は指数の倍以上、下げています。 運用責任者のスティーブン・アネス氏のチームは、「AIは終わった」とは言っていません。言っているのは「市場がAI関連の大型株に集中しすぎ、株価には高い期待が織り込まれている」ということです。このファンドを買うなら、「AI関連株は割高」と「AI関連株が崩れても景気は崩れない」の両方に賛成できるかが、一番の判断材料です。 この前提が崩れた場合に何を持つべきかは、メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」で詳しく検証します。●信託報酬を確認すると、かなりのコストがかかることがわかる 世界のベストの信託報酬は年1.903%で、これは同じチームが英国で運用するETF(上場投資信託)の経費率(年0.70%)の約2.7倍です。 ベンチマークのMSCIワールドにそのまま連動する米国のETF(URTH)は経費率が年0.24%なので、それと比べると世界のベストは約8倍のコストになります。日本で販売されている同じ指数に連動する投資信託なら、信託報酬は年0.1%程度です。 500万円を持ち続けた場合に、1年と3年でかかるコストを比べると、次のようになります(基準価額は変わらないと仮定)。 投資信託・ETF 信託報酬・経費率(年) 1年 3年 世界のベスト 1.903% 9万5150円 28万5450円 URTH(米国のETF) 0.24% 1万2000円 3万6000円 同じ指数に連動する日本の投資信託 0.09889% 4945円 1万4834円 3年間で、世界のベストは同じ指数の投資信託より約27万円も多く信託報酬がかかります。ここには購入時の手数料は含めていません。 世界のベストの購入時手数料は販売会社によって異なり、銀行や対面の証券会社では3.3%(500万円分買うのなら購入時手数料は16万5000円)が一般的ですが、ネット証券では無料のところもあります。 いずれにしても、かなりのコストがかかることがわかります。 毎月決算型の分配金は基準価額に対して年約22%で、一部は元本の取り崩しに相当する部分から支払われています。 [参考記事]●株式投信を買うときに注目すべき6つのポイント。好パフォーマンスを出しているのが良いファンドとは限らない! ●高いアクティブファンドの手数料を節約する米国株だからできる究極の割安投資方法とは? 回転率からみるよいファンドの選び方も伝授●もしも世界のベストの運用会社に聞くなら、するべき質問とは? 前述した「AI関連株をほとんど持たないという賭け」の大きさは、販売資料には、はっきりとは書かれていません。月次レポートにも「情報技術をアンダーウェイト」と一言あるだけです。運用会社や販売会社はファンドを売る側で、投資家と利害が一致しているわけではありません。 特に日本の投資信託は売れば売るほど手数料が入るしくみで、このファンドでも販売会社は購入時に最大3.3%、保有中は毎年約0.88%を受け取ります。 だからこそ、もしもこのファンドの運用会社に聞くなら、次のような質問をこちらからぶつけてみてください。 (1)AI関連株をベンチマークの指数より約20ポイント少なく持っているのはなぜか。何が起きたら考えを変えるのか。 (2)AIバブルが崩れて景気後退になったとき、資本財と金融の大きなオーバーウェイトでどう資産を守るのか。 (3)年1.903%の信託報酬は、同じチームの英国の商品(年0.70%)と比べて、どんな価値を提供しているのか。●AIでファンドを調べるコツ ちなみに私がAIに最初の質問をしてから原稿を完成させるまで、かかった時間は約105分でした。 今回は、米SEC(米証券取引委員会)の開示データベース(EDGAR)、米セントルイス連銀の経済データ(FRED)、株価データに、AIを直接つなぐしくみ(MCP)とウェブ検索を使って調べました。 [参考記事]●オルカンの39%、S&P500の53%がAI関連株!? ポール・サイ氏が開発した「株海図」で見えた投資先の実態とは? 私がAIに送った指示は、全部で約45回です。調査と下書きに約20回、コラムとメルマガへの書き分けに7回、そのあとの検証と修正に19回。1回の指示は、ほとんどが1文か2文の短いものでした。途中で運用報告書のPDFを13冊アップロードし、原稿は今のもので12稿目です。 AIを使った今回の調査で重要と思われた「コツ」を以下にまとめました。 ●運用報告書(全体版)をアップロードする……これが一番大事です。全保有銘柄が載っているのは運用報告書の全体版だけであり、それをAIがネット上で読み取れないこともあります。数ヵ月前の数字でも、ポートフォリオ全体の形はそう急には変わりません。銘柄の入れ替わりの速さは、過去数年分の運用報告書をアップロードすれば確かめられます。世界のベストを6年分調べると、半年で入れ替わるのはポートフォリオの2割ほどでした。 ●株価指数の中身は、連動するETFで代用させる……MSCIは株価指数の全構成銘柄を無料では公開していません。今回はEDGARのコネクターを使い、AIに「MSCIワールドに連動するETF(URTH)の保有銘柄をEDGARから取ってきて」と指示しました。コネクターを使わない場合は、URTHの保有銘柄の一覧を自分で探してダウンロードし(iシェアーズのサイトにCSVがあります)、AIに直接渡してください。 ●前提を疑わせる……私の「アメリカにマザーファンドがあるはず」という思い込みは、AIが最初に否定してくれました。 ●一次資料を指定し、数字に出典と日付をつけさせる。 ●保有比率ではなく「指数との差」で考えさせる。運用者の本当の見方は、そこに表れます。 ●推計と事実を分けさせる。 ●自分の仮説をぶつけて検証させる。●AIバブルが弾けた時、何を持つべきか? 今回の記事では「世界のベスト」がAI関連株を大幅にアンダーウェイトしている事実まで紹介しました。 ZAi投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう! 」では、さらに、どの銘柄がパフォーマンスを押し下げたのか、運用者の発言がここ数年でどう変化したのか、そしてAIバブル崩壊時に株・債券・現金のどこへ資金を移すべきかを、3回(11/6金、11/9月、11/10水)に分けて検証します。 ●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査に12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。米国株などの資産運用について助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう! 」を配信中。米国株・世界株を「何を買うか」だけでなく、「なぜ持つのか」「いつ見直すのか」までデータで分析。ポール・サイ氏推奨のポートフォリオも紹介しています。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法! 』発売中。