維新で相次ぐ不祥事は党員急拡大の代償か 外部頼みの統治強化に「執行部の空回り」批判
日本維新の会で首長や地方議員の不祥事が相次いでいる。最近は本拠地の大阪や隣接する兵庫で発覚し、議員らの資質だけでなく、党のガバナンス(組織統治)が問われる事態だ。吉村洋文代表(大阪府知事)は外部有識者のガバナンス委員会に再発防止策を諮問したが、党内からは「外部頼み」の実効性を訝(いぶか)しむ声が上がる。
「不祥事は多いと思う。防止するためにガバナンスを強化したい」
3月28日、国会内で開かれた同委員会の初会合終了後、吉村氏は記者団にこう述べた。
吉村氏の念頭には、直近の状況があるとみられる。
兵庫県知事の告発文書問題では、県議3人が政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏に情報を漏洩(ろうえい)するなどし、除名や離党に至った。大阪府忠岡町の杉原健士(きよし)町長は町発注工事の入札情報を業者に漏らしたとして、官製談合防止法違反などの疑いで書類送検された。
不祥事続出は支持率にも影響しているようだ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が3月22、23両日に実施した合同世論調査で、夏の参院選での比例代表投票先を尋ねたところ、維新は5位の3・2%。野党では国民民主党(12・0%)や立憲民主党(8・5%)のほか、れいわ新選組(5・3%)の後塵(こうじん)も拝した。
令和5年統一地方選などでの急拡大が、議員らの質の低下を招いたとの見方も。今では数百人規模になり、かつての「小所帯」で執行部がにらみをきかせれば統制できるレベルではなくなった。
公募による候補者選定では、党幹部が面接するが「面接だけで(資質を見極める)身体検査をするのは難しい」(関係者)というのが実情だ。
危機感が希薄に
執行部側も手をこまねいているわけではない。5年に府議による女性議員へのハラスメントが発覚した大阪維新は綱紀委員会を常設とし、大阪以外からも議員らが参加できる研修を年に2回実施している。
大阪維新の幹部は府内の不祥事について「公人としての意識を持ち続けていれば起きないはずの問題だ。研修で緊張感を醸成したい」と話す。この幹部は、結党時の先輩議員から「子供に胸を張って『正しい』といえる行動かを常に考えるように」と注意されてきたといい、「党創設から10年以上たち、危機意識が一部で希薄になっているのか」と危惧する。
党内「正常化」に向けて、吉村氏が重視するのがガバナンス委員会だ。委員には経済学者の竹中平蔵氏や弁護士ら4人を起用。諮問した不祥事防止策などについて、参院選を見据えて4月中に方向性をまとめるよう求めている。候補者選定方法の見直しも検討される。
ただ、吉村氏肝いりの運営手法には党内に異論も。ある地方議員は「大半の党員はガバナンス委員会に関心を持っていない。執行部が空回りしている。(外部の)他人任せにならなければいいが」と懸念を示し、別の議員は、同委員会に向かってぼやいた。
「『不祥事予備軍』を見抜く筆記試験でもつくってくれないか」
「予備選」効果どこまで
日本維新の会は夏の参院選に向けて大阪選挙区(改選数4)の公認候補を決める予備選を実施中で、8日に党員による投票が行われ、同日決定する。選定プロセスの透明化や候補者の知名度向上を主な目的とするが、質の向上にどこまでつながるかは不透明だ。
維新は大阪選挙区で2議席獲得を目指す。予備選は男女の公認候補を1人ずつ決める手続きで、現在の2次選考では男性枠で大阪府議と大阪市議が、女性枠では参院議員と大阪市議がそれぞれ争っている。
予備選はこれまでに令和5年の大阪市長選と6年衆院選で行われ、党内外から応募を受け付けたが、議員や議員経験者ではない全くの新人が立候補した例はない。
予備選での選挙運動は公職選挙法が禁じる本選挙の「事前運動」にあたる恐れがあるほか、6年衆院選の予備選で競合した陣営の間にしこりが残るなどしたため、今回は禁止に。各候補のプレゼンテーションや討論会をオンラインで配信するのみとした。
予備選の有権者は党員に限られる上、これまで予備選を実施したのは、本拠地の大阪だけだ。ある維新幹部は「予備選での訴えや発信は党員向けの内向きなものになる。得られる効果は、よく分からない」と懐疑的だ。
地域政党「大阪維新の会」の横山英幸代表代行(大阪市長)は、「事務的な作業量が多く、全ての選挙区で予備選を実施するのは難しい。まずは態勢が整っている地域で候補者を絞る」と説明。予備選の意義について「政策を掲げて投票に臨む予備選は候補者選定の有効な手段だ。ブラックボックスでなく、分かりやすく決められる」と強調した。