ドルインデックスは2022年の高値から反落が続き、2025年中は米ドル安が宿命である。トランプ政権の暴走で行きすぎ感があるが、調整しても米ドルは再び下落するだろう

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米金利急騰でも米ドルや米ドル資産への不信感で 米ドルが売られ、米ドル安が「構造的」に

 トランプ政権の暴走で為替相場の景色が大きく変わってきた。一番衝撃なのは、米金利急騰でも米ドルが売られ、米ドル安が「構造的」な様相を呈していることだ。

ドルインデックス(ローソク足)VS米10年物国債利回り(ライン) 日足

(出所:TradingView

 いろんな解釈があるが、簡単に言えば、資本が米国から引き上げられている、ということに尽きる。米金利上昇は米国債売りの結果であるが、米ドル高を伴っていないなら、資金が米ドル資産ではなく、ほかの資産に流入している、と理解すれば大きな間違いはなかろう。

 今のところ、金(ゴールド)は一番恩恵を受けている。先物市場において、一時3372ドルまで迫った金の急騰が象徴しているように、利息なしでも世界中の資金の避難先として広く選好されたわけは、ほかならぬ、米ドルや米ドル資産への不信感のほかあるまい。

金(ゴールド)先物 日足

(出所:TradingView

 ここまで来ると、日本で盛んに取り沙汰されていた「構造的円安論」を、急に「構造的米ドル安論」にすり替える動きが目立ってきた。1米ドル=170円必至などと強く主張してきたセンセイたちは、急に「構造的な米ドル安」を解釈し始めた。無理もない、トランプ政権の暴走は米ドルの信用や信頼感を著しく棄損しているから、解釈する場合、ネタに困ることはない。

現在の米ドル安を「構造的」と解釈すると、つい最近まで円安を 「構造的」と解釈してきた誤りをもう一度繰り返すことに

 しかし、筆者が冒頭で「構造的」に「」をつけたように、構造的という言葉は大きな誤解を招くから、安易に使うべきではないと思う。現在の米ドル安を「構造的」と解釈するセンセイたちの話を鵜呑みにすると、つい最近まで円安を「構造的」と解釈してきた誤りをもう一度繰り返す、ということになりかねない。

 言ってみれば、貿易赤字やデジタル赤字云々で「弱い円」を解釈してきた方々は、つい最近まで双子の赤字を抱える米ドルの「構造上」の問題を意図的に無視、また誤魔化してきたわけだ。

 皮肉にも、トランプ政権の暴走の初心も、ほかならぬ「莫大な貿易赤字を解消する試み」であるから、本来なら彼らはこれから「構造上の米ドル高」を解釈しなければならないはずだ。

 それでも慌てて「米ドル安の構造」を解釈し始めたのはほかならぬ、米ドルが急落してきたからだ。

 要するに後解釈かつ風見鶏なので、相場の後を追って理屈を掘り起こす専門家ではあるが、相場を見通す専門家ではなかった。

 ただし、このような専門家は世界中において圧倒的に多く存在し、日本に限った話ではないことを念のため記しておく。

米ドル高・米ドル安、円高・円安、そのほとんどが「構造的」な要素が左右できるトレンドではない

 話がやや逸れたが、要するに米ドル高にしても、米ドル安にしても、あるいは円安にしても、円高にしても、そのほとんどがいわゆる「構造的」な要素が左右できるトレンドではない。為替市場は森羅万象でありながら、極めて単純なので、ファンダメンタルズ上の構造はテクニカル上の構造には敵わない。

 ドルインデックスの長期チャートを観察すればわかるように、米ドル全体は、あの2008年の金融危機(リーマンショック)前にて底打ちし、その後一貫して2022年高値まで買われてきた。為替市場の「DNA」は16年~17年サイクルにあると言われ、2022年高値からの反落波動が続いており、少なくとも今年(2025年)いっぱいまでは米ドル安が「宿命」である。

ドルインデックス 月足

(出所:TradingView

 だから、昨年(2024年)9月安値を起点とした米ドルの一時高騰(下のチャートの緑の矢印)がいくらもてはやされても、しょせん2022年高値を起点とした大型下落変動の途中における調整子波であった。

ドルインデックス 日足

(出所:TradingView

 まだ記憶に新しいが、その時もいわゆる「トランプ・トレード」と言われ、「構造的な米ドル高」(あるいは構造的な円安)とセンセイたちが解釈していた。

 ちなみに、確かに目先、米ドル全体の下落はやや「行きすぎ」感がある。しかし、途中の調整があってもおかしくないと思うが、ドルインデックスはゆくゆくは95の節目を割り込むだろう

ドルインデックス 日足

(出所:TradingView

 チャート上にてその理屈を示しているが、詳しい解説はまた次回に譲りたい。市況はいかに。

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