ASEAN、米抜き巨大経済圏を模索…思惑一致の中国・湾岸諸国と初の首脳会議で存在感示す狙いも
【クアラルンプール=佐藤友紀、北京=吉永亜希子】東南アジア諸国連合(ASEAN)が今回、ペルシャ湾岸6か国による「湾岸協力会議(GCC)」に中国も加えた3者による初の首脳会議を開いたのは、米トランプ政権の一方的な関税措置への対策として、米国以外の国や地域との関係強化を図るとともに、国際社会にASEANの存在感を示したいとの思惑がある。
27日、クアラルンプールで開かれたASEANとGCCに中国を加えた首脳会議で話をするマレーシアのアンワル首相(中央)=AFP時事「ASEANとGCC、中国は、経済と地域の安全保障のために連携を強化し、新たなリーダーシップをとる」。ASEAN議長国マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は27日、会議後の記者会見でこう力説した。
ASEAN政府筋によると、会議では、貿易や投資の促進を中心に協議が行われ、自由貿易協定(FTA)交渉を推進する方向性も確認された。出席者が、米国の保護主義的な政策を念頭に、多国間主義の重要性を強調し、今回の会議の意義を確認し合う場面もあったという。
中国と経済的な結びつきを強めるASEAN各国に対し、米国は高率の「相互関税」を課すと発表している。各国で対米貿易の減少が見込まれる中、ASEANとしては、最大の貿易相手である中国や、世界有数の産油国を抱えるGCCとの関係をさらに強化することで、経済成長を維持したいとの狙いがある。
ASEANとGCC、中国の国内総生産の合計は、世界全体の2割を占め、人口の合計も世界の4分の1を超える。ASEANは今回、中国を招待し、3者による初の首脳会議を実現させた。ASEAN外交筋は「米国抜きの巨大経済圏をASEANが主導して作った」と語るなど、存在感を示した形だ。
一方、中国は、4月に 習近平(シージンピン) 国家主席がASEAN加盟3か国を歴訪するなど、米国への信頼感が揺らぐ東南アジア地域との関係強化を進めている。
李強(リーチャン) 首相は今回の会議で、中国とASEAN、GCCの「三つの市場」の間で、「資源や技術、人材が迅速に流通するようにし、貿易や投資の利便性を高めなければならない」などと述べ、経済協力を加速させる必要性を訴えた。
中国にとって、エネルギー安全保障上、GCCとの関係強化も重要だ。GCC各国に対し、インフラ(社会基盤)整備や新エネルギー分野での投資拡大をテコに、関係強化を図っていくものとみられる。
GCCも、最大の貿易相手国の中国の市場や、さらなる経済成長が見込まれるASEAN市場への期待とともに、安全保障面でも、イスラム教徒を多く抱えるASEANの支持を取り付けたいとの思惑がある。
3者の狙いや思惑が一致した中で初開催された首脳会議が、今後の地域間貿易や安全保障などにどう影響するか注目が集まっている。
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