【米国市況】大型テク株反発、一定の冷静さ戻る-ドル155円台半ば

28日の米国株式市場では、世界的なDeepSeek(ディープシーク)ショックで前日下げたS&P500種株価指数とナスダック総合指数が反発。市場はハイテク大手決算と米連邦公開市場委員会(FOMC)会合に注目している。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6067.70 55.42 0.92% ダウ工業株30種平均 44850.35 136.77 0.31% ナスダック総合指数 19733.59 391.76 2.03%

  中国の新興人工知能(AI)開発企業DeepSeekの台頭で、前日には米ハイテク株の割高なバリュエーションが正当化できないのではとの懸念が広がったが、この日は市場に一定の冷静さが戻った。 

  S&P500種は約1%、ナスダック100指数は1.6%それぞれ上昇。前日に単一銘柄として過去最大となる5890億ドル(約91兆6000億円)の時価総額を失ったエヌビディアは約9%値上がりした。

  マイクロソフトは2.9%上昇。トランプ米大統領は27日夜、中国系動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米事業の買収について、マイクロソフトが協議中だと述べた。

関連記事:トランプ米大統領、マイクロソフトがTikTok買収協議中-将来は不透明

  ハイテク株が回復する一方で、S&P500種構成銘柄の大半は下落。これは前日とは逆の動きだ。

関連記事:DeepSeek衝撃は「無差別」でない、大半の株が上げた27日の特異な市場

  ハイテク7社で構成する「マグニフィセント・セブン」に連動する指数は2.7%上昇。29日には同7社のうち、テスラ、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズが決算を発表する。ダウ工業株30種平均は0.3%高、ラッセル2000指数は約0.2%高で終えた。

関連記事:メタとマイクロソフト、AI投資の評価で株価に明暗-29日決算に注目

  個別銘柄では、ボーイングが1.5%上昇。ケリー・オートバーグ最高経営責任者(CEO)が同社にとって極めて重要な737型機の生産ペースの回復を巡り楽観的な見方を示したことが好感された。ジェットブルー航空は26%急落。今年のコストが市場の予想以上に増えるとの見通しを示したことが売り材料。

関連記事:ボーイングCEO、737型機の年内生産回復を楽観-決算は赤字

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州担当最高投資責任者(CIO)、ソリタ・マルチェリ氏は「AIのテーマは当面続く。DeepSeekショックはこれを改めて裏付けたと言える」と指摘。「一方で、今回の動向は一極集中、あるいは過度にパッシブな投資のアプローチはリスクを伴うことも示した。AIエコシステム内で価値が急速にシフトするためだ。AIへのエクスポージャーを得る上で、積極的かつ分散したアプローチがより望ましい方法だと、当社では考えている」と述べた。

  FOMC会合では金利据え置きを決定するとの見方が大勢だ。投資家はインフレの先行きを巡り、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言に注目している。22Vリサーチが実施した調査によると、FOMC会合後の市場の反応について「まちまち/反応薄」との予想が67%を占めた。「リスクオフ」との予想は21%、「リスクオン」は12%だった。

  ハイテク株が前日大きく値下がりしたことで、11兆ドル規模の上場投資信託(ETF)市場で買い場をうかがっていた投資家にとっては好機となった。

  DeepSeekショックで前日3%近く下落したインベスコQQQトラストシリーズ1(ティッカーQQQ)には43億ドルが流れ込んだ。これは1日当たりの流入額としては2021年以来の大きさだ。

  スレートストーン・ウェルスのケニー・ポルカリ氏は「買い手は豊富に存在する。前日に株式を購入した投資家に話を聞けば、こうした銘柄を大幅なディスカウントで購入できた機会に満足しているだろう」と指摘。「(一部にとって)やや不安にさせる出来事だったが、パニックに陥る必要はない。この先どのような展開になっても、競争は良いことだ」と述べた。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は、前日の株売り局面で値上がり銘柄の数が値下がり銘柄を上回ったことは「株高の裾野がAIセクターを超えて広がっていることを示す明確な兆候」だと指摘した。

米国債

  米国債相場は長期債がアンダーパフォーム。ただ、7年債入札(発行額440億ドル)が旺盛な需要を集めたことが追い風となり、持ち直して終えた。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.78% 0.6 0.13% 米10年債利回り 4.53% -0.2 -0.04% 米2年債利回り 4.19% -0.2 -0.05%     米東部時間 16時50分

  7年債入札は最高落札利回りが4.457%と、入札前取引(WI)水準を約1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下回った。

  前日、質への逃避から年初来で最低水準をつけていた10年債利回りは、ほぼ変わらずとなった。

為替

  ニューヨーク外国為替市場では、ドルが再び買われ、主要通貨に対して全面高の展開となった。トランプ大統領による関税発動の脅しに対して、市場はドル買いで反応する傾向を強めている。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1301.19 4.35 0.34% ドル/円 ¥155.51 ¥1.00 0.65% ユーロ/ドル $1.0430 -$0.0062 -0.59%     米東部時間 16時50分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時およそ0.5%上昇した。

  上院が財務長官就任を承認したスコット・ベッセント氏が一律関税を2.5%からスタートさせる案を支持しているとの一部報道を巡り、トランプ氏は2.5%よりも「大幅に高く」設定する考えを表明した。

関連記事:トランプ氏「半導体に近く関税発動」2.5%より大幅に高い一律関税望む

  ドル高が進行する中で、円の下げが目立ち、ニューヨーク時間には155円76銭まで売られた。日本銀行が米国の関税動向に敏感な姿勢を示していることも円の重しとなっている。

  チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「ドル高の流れは、それを覆す証拠が出てこない限り続く」と指摘。「ドルには下げ余地があり、いずれかの時点でおそらく下落すると考えているが、関税の脅しは実際の発動を伴わなくとも、交渉材料として残るだろう」と述べた。

  トランプ氏の関税政策が物価圧力を押し上げ、米国の金利が高止まりするとの見方から、投資家はドル高を見込んだポジションを構築している。また関税発動によって米国の輸入が減れば、米国外へのドル資金の流れが細ることでドルを下支えする公算が大きい。

  みずほ証券の大森翔央輝チーフデスクストラテジストは、投資家の一部はトランプ政権下で、ドルが優位性を維持すると過度に楽観していた可能性があると指摘する。その上で、市場のポジションがドル高を見込んだ方向へと大きく偏っており、その逆がほとんどないことを踏まえると、ボラティリティーの急上昇を招く恐れがあると述べた。  

原油

  ニューヨーク原油相場は反発。カナダなどからの輸入品に対して2月1日までに関税を賦課するというトランプ大統領の計画は変わっていないと、ホワイトハウスは説明した。カナダは米国への主要な原油輸出国。

関連記事:2月1日の関税発動期限は変わっていない-米大統領報道官

  ホワイトハウスのレビット大統領報道官は、 カナダとメキシコ、中国に対して2月1日までに関税を賦課する計画は変わっていないと述べた。米国の原油輸入の半分余りをカナダが占めている。

  トランプ氏は27日、外国製半導体チップや医薬品に近く関税を発動する方針を表明。鉄鋼と銅・アルミニウム製品にも関税を賦課すると述べた。全ての輸入品に課すと公約してきたユニバーサルベースライン関税(一律関税)については、2.5%より「大幅に高く」設定したい考えを示した。これを受けて既に強気の地合いが広がっていたが、ホワイトハウスの声明によりそうしたセンチメントが強まった。

  TP ICAPグループのエネルギースペシャリスト、スコット・シェルトン氏は「午後に見られた価格急伸は、輸入されたカナダ産原油の価格がさらに高くなるのではないかとの懸念が背景にある」と分析した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物3月限は、前日比60セント(0.8%)高の1バレル=73.77ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は41セント(0.5%)上昇し77.49ドルで引けた。

  金相場は反発。関税を巡るトランプ米大統領の新たな発言を受け、安全資産である金を買う動きが強まった。

  トランプ氏は27日、全ての輸入品に課すと公約してきたユニバーサルベースライン関税(一律関税)について、2.5%より「大幅に高く」設定したい考えを示した。一律関税を巡りトランプ氏は、「それがどうなるか念頭にあるが、設定はまだだ。だが、わが国を守るために十分なものとなるだろう」と述べた。

  米上院が27日に財務長官人事を承認したベッセント氏が一律関税を2.5%からスタートさせる案を支持しているとの報道について問われると、ベッセント氏がそれを支持していると思わず、自分自身も支持しないと答えた。

関連記事:トランプ氏「半導体に近く関税発動」2.5%より大幅に高い一律関税望む

  サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は「ドル上昇と株価の安定化という逆風をよそに、金は好調に推移している」と指摘。「世界情勢は依然として非常に不透明であり、それが金のような逃避先資産を引き続き支えている」と述べた。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時49分現在、前日比23.14ドル(0.8%)高の1オンス=2763.95ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は28.40ドル(1%)上昇の2794.60ドルで引けた。

原題:Stock Buyers Step In to Boost Tech After AI Jolt: Markets Wrap

Treasuries Pare Losses After 7-Year Auction Draws Strong Demand

Dollar Jumps to Cement Place as Market’s Favorite Tariff Trade

Dollar Rises as Tariff Risk at Forefront; Yen Falls: Inside G-10

Oil Rises as White House Reiterates Plan for Tariffs on Canada

Gold Gains as Traders Seek Safety From Latest Tariff Threats(抜粋)

関連記事: