【江本孟紀】「地上波で放送しないWBC」は二軍選手中心の編成で十分。今こそネットフリックスに「ノー」を突き付けてほしい(週刊SPA!)
2026年3月に開催される第6回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、地上波のテレビ中継がなくなる。アメリカのネットフリックスが、日本向け放映権のすべてを獲得したと発表。このニュースも世間を大いにざわつかせた。 私の率直な感想は、「とうとう来たか」である。これまでWBCに高い関心を示してこなかったアメリカ側が、「大谷が出場すれば日本市場で儲けられる」と判断した途端の、手のひら返しともいえる横暴ぶりである。 ※本記事は、江本孟紀著『長嶋亡きあとの巨人軍』より適宜抜粋したものです。
政治やビジネスの世界でもそうだが、アメリカは「ゼニになる」と思えば、有無を言わさず一方的に無茶を通してくる。日本には場の空気を読んで「忖度する」ことを良しとする文化があるが、アメリカにはそんな遠慮は存在しない。すべてが「実力至上主義」であり、今回のネットフリックスの介入は、まさにその典型ともいえる。 一連の動きに対して、日本はただ指をくわえて見ているだけなのか。それとも報復ともいえるような措置をとるのか。 私としては、「ノー」を突き付けるような行動をとってほしいと思っている。 一例を挙げれば、「WBCに日本のトップ選手を派遣しない」ということだ。「今回は地上波で放送されないから、前回ほど国民は注目しないでしょうし、盛り上がりに欠けるものと思われます。NPBからは二軍選手を大量に派遣しますので、あとはお好 きにどうぞ」とでも言っておけば十分ではないだろうか。
これには明確な理由がある。 私は解説の仕事でセ・リーグの各球場に足を運んでいる。解説者席というのは、屋内外を問わず、どこも上のほうにあり、思いのほか観客席が見下ろせる場所にあるのが通例だ。 ふと試合中にバックネット周辺に目を向けると、数人の外国人が試合をつぶさに観察しているのだ。一度や二度ではない。旧知の記者に聞いたところによると、正体はMLB球団の編成部の人間らしい。わざわざ現地で日本人選手の動向を細かくチェックしているというのだ。 つまり、MLBを志望する日本人選手の立場からしても、「MLBの人たちは日本野球の公式戦を普段からよく見ているのだから、わざわざWBCでアピールする必要はない」ということになる。 アメリカに対して、ときには勇気をもって断ってみることも必要なんじゃないかと考えている。繰り返しになるが、このままではMLBの草刈り場的な色彩が、さらに色濃くなってしまう。そうした流れを阻止する意味でも、今こそ思い切った措置をとってみるのも、アリではないだろうか。 <談/江本孟紀> 【江本孟紀】 1947年高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組(社会人野球)を経て、71年東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)入団。その年、南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)移籍、76年阪神タイガースに移籍し、81年現役引退。プロ通算成績は113勝126敗19セーブ。防御率3.52、開幕投手6回、オールスター選出5回、ボーク日本記録。92年参議院議員初当選。2001年1月参議院初代内閣委員長就任。2期12年務め、04年参議院議員離職。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。2017年秋の叙勲で旭日中綬章受章。アメリカ独立リーグ初の日本人チーム・サムライベアーズ副コミッショナー・総監督、クラブチーム・京都ファイアーバーズを立ち上げ総監督、タイ王国ナショナルベースボールチーム総監督として北京五輪アジア予選出場など球界の底辺拡大・発展に努めてきた。ベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(ベストセラーズ)、『阪神タイガースぶっちゃけ話』(清談社Publico)をはじめ著書は80冊を超える。
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